育休男児

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こんな物語を読むつもりじゃなかった|『烏に単は似合わない』阿部智里

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子供の頃「からすのパンやさん」という絵本が大好きだった。ものすごい数のパンが出てきてとても楽しいお話だったと記憶している。

カラスと言えば黒というのが世間の常識だか、からすのパンやさんの子供たちはいろんな色をしていた。確か「レモンちゃん」というのがいたと思う。黄色だろうな。「おもちちゃん」は白だったかな。

そんなカラフルなカラスたちと、バイオリンパンとかじどうしゃパンといったユニークなパンたちが大好きで、何度も読んでもらっていたように思う。風車もどこかにあった気がするなぁ。

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『烏に単は似合わない』もカラスが主役の物語だ。「人間の代わりに『八咫烏』の一族が支配する世界」という裏表紙の説明を見て「どういうこと?」となった。読み始めるとすぐにわかるのだが、この物語に登場するのはすべてカラス。でも『からすのパンやさん』のようにいかにもカラス、というんじゃなく、あくまで見た目は人間と同じ。

設定は、「単(ひとえ)」という言葉から連想されるように日本の古典文学の世界のよう。天皇と思えばわかりやすい一族の長がいて、その息子、いわゆる「次期天皇」である若宮の妃選びが物語の大筋だ。

この世界で有力な四家、つまり北家、南家、東家、西家がそれぞれ1人ずつ姫を出す。そして、その4人の中から妃が選ばれる。当然、妃に選ばれた家は、政治的にも大きな力を得る。だからどこも必死。

そんなライバルである4人の姫が同じ建物の中に暮らす。それはもう女の世界というやつだ。いじめがあったり駆け引きがあったりドロドロしたバトルが始まる。主人公のように描かれる東家の姫は、妃に選ばれることにそこまで必死じゃない分、必死な方の姫にずいぶん攻撃される。

時折、ちょっとした(とも言えない)事件が起こりつつも、最終的には運命的に妃に選ばれ、ハッピーエンドを迎えると思っていた私をぶん殴ってやりたい。帯に書かれた「予想を裏切る」というシンプルでありふれた煽り文句を軽視していた。ファンタジーなんかではなく、本格ミステリーだったのだ。

それもこれも「序章」とされた、たった2ページのせいだ。あれのせいで私の頭は完全に(途中、紆余曲折はありつつも)1つのエンディングにたどり着くことを勝手に予想していた。いや、予想させられていた。

政治的な背景と、おそろしく緻密に練られた登場人物の心理的絡み合い。後半、1人の過去が明らかになるにつれて一気に氷解していく謎。その勢いは凄まじく、ページをめくる手が止まらない。

後半を一気に読み終えた後「あれ?こういう本を読むつもりじゃなかったのに」という気持ちになった。これはもちろん良い意味で。

以上、なべこう(@fukujion)がお送りしました!


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